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の良い開けた景観が容易に得ることができる。
このように、港湾斜面都市ではその特徴的な地形形状により、優れた景観などの利点を容易に得ることができる反面、平坦地に形成された都市には想像しがたい問題点も挙げられている。そのため、従来の都市整備では解決できない新たな街づくりの考え方を見いだすことが重要である。
4−2.港湾斜面都市の空間的特徴
港湾斜面都市の利点として素晴らしい開けた景観の確保が挙げられる。とくに、展望のきく山頂などにビューポイントを配するなど、この利点を有効に活用した空間を創り出している。また、Photo.4に示すような海に向かって垂直に延びた道路を整備することにより、効果的に良好なビスタ景観を創り出している。さらに、Photo.5のように「100万ドルの夜景」と称される優れた夜間景観は港湾斜面都市特有の地形形状により創り出されている。このように、港湾斜面都市には景観資源が豊富にあり、観光地として有名な都市も多い。
一方、港湾空間は機能の衰退などから遊休地が多くみられたが、Photo.6のように一般に開放し、水際線まで近づくことができる。また、煉瓦倉庫を再利用するなどして、商業地もしくは憩いの場として利用されている都市もある。
このように、港湾斜面都市には遊休化を余儀なくされた結果が観光・レクリエーション的要素をもつ空間の形成を促している。とくに、平坦地の少ない港湾斜面都市においては港湾景観の整備など、水辺のもつ情緒的資質を活かした都市的港湾空間として整備することが望まれる。
5.港湾斜面都市の地域特性
5−1.評価項目の選定
港湾斜面都市の特性把握にあたり、港湾および都市の指標を設定した。港湾指標として「港湾規模」「ターミナル」「出入港船舶」「臨港地区」の1指標を、都市指標として「土地利用」「人工・世帯」「教育・医療」「財政・産業」「社会基盤」の5指標を設定した。これらをもとに各指標を構成する評価項目を抽出した結果、港湾50評価項目・都市101評価項目となった。つぎに、これらの抽出された151の評価価項目に対し、各指標ごとに評価項目間の相関係数を算出し、指標ごとの意味合いをとりながら指標を代表する評価項目を選定した。このプロセスで得られた評価項目の一覧をTable.2に示す。
さらに、データの標準化を行い、港湾斜面都市、港湾都市それぞれの平均値を項目値として与え、さらに各指標ごとの平均値を指標平均得点とした。本研究では、これらの得られた項目値および指標平均得点を用いて比較・分析する。

Table.2 Choice of value items

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5−2.港湾機能の特性把握
港湾指標平均得点での比較をFig.2に示す。指標ごとの特徴から、港湾の主要機能である物流・旅客交通機能、産業基盤機能に関連する「ターミナル」「臨港地区」指標について考察する「ターミナル」指標での比較をFig.3に示す。港湾斜面都市と港湾都市については港湾取扱貨物量に双方の差はあまりみられないものの、港湾斜面都市で自航取扱貨物量が高い項目値を示しているのに対し、港湾都市で移入取扱貨物量と石油等備蓄量が高い項目値を示している。このことから、港湾斜面都市と港湾都市において、港湾の利用形態が大きく異

 

 

 

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